(2021年12月30日修正)
目次
何をHave(持っている)?
タイトルの英語の意味はそのまま「私は持っている」「あなたは持っている」と捉えてください。
そして省略されていますが大切なのはhaveの続きになる「control」というワードです。
知っている人も少なくないのかもしれませんが、「I have/You have」の言葉の掛け合いは、民間・軍用に関わらず航空機操縦室に主操縦士(メインパイロット)と副操縦士(コ・パイロット 以下、主はメイン、副はコ・パイと表現)の二人が乗り込む時、コックピットで互いの「今どっちが操縦権を持っているか」の確認のために用いるやりとりです。
使うのはどんな時?
フライト中なのは間違いありませんが
操縦権を持っている人が
“I have control”
と宣言すれば、それに対しもう一人は
“You have control”
と返答します。
航空機の操縦について機械上は、メイン席、コ・パイ席の操縦はどちらも同じ動きができ、片方が操縦桿から手を離しても、もう片方の操縦している側と全く同じ動きをします。
でもオートパイロット以外の場面では基本的にはメインもコ・パイも操縦桿を握ります。
「同じ動きをするなら非効率で意味ないじゃん」
と思った人はある意味正しいとも思います。
でも万が一、片方が体調不良で倒れたら、操縦桿が故障したら、そう考えると安全策として二人とも操縦桿を握るのが最適です。
ただし、どちらが操縦をしているのかを明確にするために
“I have control”
“You have control”
と互いに声をだします。
メイン、コ・パイ共に操縦桿を握るのはなぜ?
自衛隊時代に何度か安全教育関連資料で見たこと内容で、業務が忙しいのか休日のことを考えていてか、パイロットとコ・パイ間でたまにどちらが操縦を担っているか分からなくなるそうです。
また、民間航空機ではほとんどない事例だとは思いますが、軍用機等で夜間フライトを洋上で行うパイロットは目標となる灯火がない場合、稀に「空間識失調(バーディゴ)」という上下の感覚が分からなくなる事起きるそうです。コントロールを握っている操縦士がバーディゴに陥っている時に、改めて宣言することで異常に早く気づく事が可能です。
バーディゴによる事故の事例としては、夜間のフライトで洋上に光る夜光虫を星と誤認して下降姿勢なのに水平を維持していると錯覚し海面に激突したケースがあるそうです。現代では各種センサー類が警告を発するので早く気づくけるようになってはいます。
危険が伴うのは飛行中だけとは限りません。日々の航空機の運航はエプロンと呼ばれる駐機場から滑走路までの移動も少なからずアクシデントが付き纏います。航空機はかなり大きいので、風の影響やちょっとした操縦ミスで誘導路から外れ舗装場所から草地にはみ出したり、他の機体と接触したりもあり得ます。
ちなみに通常の地上での作業は管制塔にいる管制官も安全確認を目視やセンサー等電子機器で監視・警戒を行っています。そして空港での権限は管制官の指示が最優先となっています。
日常生活でも意識すると使える
スムーズな仕事のため、方針を統一する
話は最近始めたアルバイトに変わります。
詳しくは特定されるので書きませんが、アルバイトと準社員合わせて5〜6人程度が同じ業務を同時にやっています。
私は短期のアルバイトなので基本指示待ちですが、たまに指示をする準社員で同じ業務でも人によって全く違う指示をすることがあります。
準社員間でその時、誰が場をコントロールするのか明確になっていないことが原因だろうなとすぐ気づきました。
さすがに2回目からは、
「〇〇さんと△△さんとで指示が違うのでお互いで指示を統一してください。バラバラの指示だと困るし場合によっては損害に繋がりますよ」
この意見を言った後で良い解決策は無いもんかな、と考えた時に頭に浮かんだのが、
“I have control”
“You have control”
自分が主導権を持っているのか、それとも相手か。
合理的なら多くの人がさまざまな意見が出た方が良さそうに思えますが、実際に仕事が止まらない状況であれば誰か一人の方針で全員の動きが統一されている方がスムーズに進みます。
事故防止
お互いが声を出して確認するだけでミスが減らせます。
特にありがちなのは、そこそこできる人間が集まって仕事などを進めていて忙しくなってくると色んなミスが出てくる経験があるかと思います。
なぜ仕事ができる人間が多いのにミスが発生するかというと
「誰かやってるはず」
と思い込みやすいからです。
なので進捗状況の確認を兼ねてお互いが何をしているか、何をしていないかを改めて確認することでミスが減らせますし、危険が伴う作業であれば重大事故を減らせることになります。
このことは自衛隊内の事故にならなかったけど危険な状況の報告、通称「ヒヤリハット」でもお互いが確認しあったことで事故が防げた事例がいくつもあります。
英語を身につけたいと思ってこのブログがヒットされた方は下ののブログ記事を参照にしてみてください。
私が1ヶ月ほどヨーロッパを旅行した経験の中で、体験として身につけたやり方にも触れた内容になっています。
経験談
確認をとっていないために、お互い相手がやっているものと勘違いして時間が経過し、大きなミスにつながる場面を自衛隊時代に後輩間、同僚間で何度も見かけました。
その度に
“I have control”、”You have control”だよ。間抜けな様だけどとても大事なことだよ。
と言いました。
ただ、日常業務に”Control”を入れるとなんだか仰々しいのと短時間で伝わることを考慮して省くのが良いと感じます。
だから
“I have“
“You have“
*
なんで英語なの?と文句じみたことを言う後輩たちもいましたが、
「パイロットが使ってる」
の一言で素直に受け入れてくれました。
パイロットは基本幹部自衛官であり、航空学生は倍率20倍以上の入隊試験をくぐり抜け、さらに厳しい通常訓練・飛行訓練を経て6年後にようやく航空機操縦士+幹部自衛官の資格を得ています。そのパイロットが使っていると言えば、意味がある言葉だと理解できるからだと思います。
パイロット主体ですが仕事のやり方の一つに触れた記事はこちら
2021年2月に防災士の資格を取得し、よりI have/You haveを意識するようになっています。
防災士の資格取得については以下のブログ記事を参照していただければと存じます。
防災士になったよ/費用・受験手続き、難易度、メリット、デメリットを解説します
以上です。
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