正しい箸の持ち方の話

Twitter等のSNSでも定期的に話題になる箸の持ち方ですが、美しさ、礼儀作法と関係しているのは知られていますが、近代で人によっては「食べ物を口に運ぶのに使い方はどうでも良い」という意見も一方であります。

私自身は親から箸の持ち方をちゃんとするように躾けられましたし、正しい持ち方も一応知識としてもありますが、礼儀作法やマナーの観点でなく歴史と医療衛生とボディメイク、健康の観点から解説していきたいと思います。

ただ言いたいことは先にポイントだけ書いておきますと

  • 正しい礼儀作法の箸の使い方は衛生面で優れている
  • 食べ過ぎを抑えダイエット効果がある
  • 食品によって箸の使い方が変わるので脳トレにもなっている

では最初から解説しましょう

正しい礼儀作法の箸の使い方は衛生面で優れている

箸の文化は日本だけでなく中国、韓国、台湾など東アジアではポピュラーなものです。

その歴史も古く日本では弥生時代〜飛鳥時代(3〜7世紀には知られていた様です)

また遣隋使(7世紀ごろ)が中国の当時の隋に訪れた際に箸で食事を振る舞われたことで日本にも浸透する様になったともいわれています。

ただ当時の中国を含め韓国や台湾などは箸と匙(匙:スプーンのような道具)を併用していたようで、日本の様に箸だけで食事をとるのは独特の発達と見られています。

参考農水省 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1605/spe2_02.html

何よりも箸の礼儀作法は衛生面で菌や悪いものを口に入れない様にする役割が大きいと見られます。

例えばかき込むようにお椀や皿を口につけて食べるのは、仮にご飯や食べ物の中に異物が混じっていても一緒に食べてしまいます。

なので正しい礼儀作法ではこのようなかきこみ箸は無作法と言われています。

また他にもいくつかありますが、正しい箸の持ち方は他人から病気の菌が伝わってこないようにする面もあると考えます。

日本の食文化において、毒を含んでいたり菌だったりするものが食用になるのは正しい箸の使い方からの発展かもしれません。

余談ですが、豊臣秀吉の時代でキリスト教の布教でポルトガルから訪れていた宣教師や海外の人たちは素手で牛の生肉を食べていたそうです。

詳しく書かれた東洋経済オンラインのリンクを貼っておきますので参照してみてください「「日本人の奴隷化」を食い止めた豊臣秀吉の大英断

海外連行された被害者はざっと5万人にのぼる」https://toyokeizai.net/articles/-/411584?page=2

素手だと、現代でもどうかと思いますが、江戸時代で衛生面もかなり悪い昔では何がついているか分からないので食中毒の要因とも考えられますね。

食べ過ぎを抑えダイエット効果がある

箸の正しい使い方をするのは面倒ですし、箸のひとつまみは量が少なく満足が得られ難いと感じることが少なくないでしょう。

しかし少ない量を口の中に入れると、噛む回数と時間が増えます。

しっかり噛むことで唾液が十分に分泌されつつ消化しやすくなり、また少量でも満足感も得られやすくなり、結果的に少ない量で満腹感が得られます。

逆の発想で、噛まなくても食べられる麺類は大量に食べることができます。またたくさん食べられるファストフードのような食品は数回噛むだけで小さくなり胃の中に入ります。このため満腹感を得られるまでの時間内により多く食べることができ食べ過ぎとなりやすくなります。

結果として体重が増えることになってしまいます。

ただ成長期の子供や、特にマッチョを目指している人にはこの大量に食べる方法がメリットとも言えます。それに栄養バランスよく食べていれば体を壊すことはそうそうないとも考えられます。

ダイエットが上手くいかず生活習慣病にまっしぐらな例は、柔らかい脂もの・炭水化物ばかりの食品を大量に食べている人なのは経験上よく見かけました。

なので箸を正しく使うことでダイエット効果が期待できます。

食品によって箸の使い方が変わるので脳トレにもなっている

箸を上手に扱えないと大きな食べ物を小さくすることも難しく、結果として箸をブッ刺して食べるお行儀の悪い作法と見えてしまいます。

箸の使い方が上手な人との食べ方を見ていると、大きなものを箸で器用に一口大の大きさの状態に分けて、器を口につけることなく食べています。

背筋も曲がらず美しい食べ方とも見えますが、何より魚、肉、野菜、煮物、焼き物、汁物で箸の使い方が違っていてたった2本の箸でここまで多彩な使い方ができることに道具としての優秀さを改めて感じます。

例で挙げると、はさむのはもちろん、細かく切る、離す、まとめる、削ぐ、といった使い方があります。

ただ勘違いしがちなのは左手を使わないということもなく、焼き魚の種類によっては左手で魚の頭を押さえるのも作法としてちゃんとあります。

京都府公式HP「魚のきれいな食べ方(イサキ)」より

https://www.pref.kyoto.jp/suiji/1347253873820.html

工夫しながら食べると脳も鍛えられます。何より時間をかけて食べることにもなり食べ過ぎを防止する効果も期待できます。


まとめ

最初に書いたことにもありますが、現代の日本においては食品衛生は清潔な状態を維持されているので、箸の持ち方をあまり気にする必要がないと言えます。

また小さな子どもだと何気に箸をちゃんと使うのは難しく、もししっかりと自分の子供に箸の持ち方を躾けるなら手の大きさに合ったお箸を持たせるようにするのが良いでしょう。

ただ成長中の体には少食は向いていないので、ある程度箸の使い方を練習したらたくさん食べられるような工夫も必要かなとは思います。

以上です。

偵察用?気象研究用?気象観測用気球について元気象観測のプロとして解説します

2024年2月2日アメリカ国防総省が中国から飛来した偵察用の気球がアメリカ上空高度約18000m(60,000〜65,000フィート)を飛行していることを発表し、同月4日14時39分アメリカ空軍のF-22戦闘機がサイドワインダー対空ミサイルで撃墜したと一連の事件の報道がアメリカをはじめ日本だけでなく世界的に報道されました。

偵察用とアメリカ国防総省が指摘しても、中国側は民間の気象研究用の気球が誤ってアメリカに侵入したものと公式発表しています。

日本のSNSやさまざまなニュースコメントで「気象観測ラジオゾンデの気球だ」と書かれている物が多く散見されました。

著名人でもほぼ詳しく触れることなくアメリカのニュースの引用ばかりだったので、偵察用か気象用かははっきりとは言っていません。

私は海上自衛隊の気象観測を主とした職種だったので、高層気象観測もどのような器材や測器を使うか知識と経験があるので解説します。

気象観測で気球を使う「高層気象観測(GPSゾンデ観測)」

この画像は気象庁高層気象台のサイトより引用しています。

気象庁高層気象台のサイトのリンク「気球を用いた高層大気の観測について」のページです

https://www.jma-net.go.jp/kousou/obs_second_div/about_sonde/about_sonde.html

毎日午前9時と午後9時にスタートする、ラジオゾンデ観測に使われるヘリウムガスを充填した直径5m程度の気球にパラシュートと観測器材を取り付けたものが画像として貼られています。

観測器材自体は観測種別にもよりますが、最大でも800グラムと、それほど大きい訳ではありません。

観測するデータは、気温、露点温度、気圧、そしてGPSにより位置追跡することで高度ごとの風向風速、これらのデータは地上にある追跡用レーダー施設に送信されて観測結果はリアルタイムで地上で知ることができ、1回のすべてのデータは気象専用のネットワークによって全世界向けに発信されるほか、各地のデータを用いて高層気象天気図などに利用されたり、天気予報の初期数値としても活用されます。

日々のニュースで特に冬の時期に聞かれる「高度5000mの−40℃の寒気」はこの高層気象観測で得られたデータの活用例の一つです。

下の画像は観測結果を元に解析描画された300、500hPa高度の天気図です。

気象庁発表AUPQ35高層天気図

気球自体は高度30km程度まで上昇するので、気圧の関係で最終的には直径が10mを超える大きさになるとのことです。

最後は破裂して測器はパラシュートでゆっくり降下するようになっています。

この高層気象観測は全世界で統一された時間に実施されるものです。

この観測データは日々の暮らしの天気予報のための重要なデータでもあり、加えて毎日のように世界中を飛んでいる航空機の安全な運航にも重要なデータです。

ラジオゾンデ以外にも気球を用いた気象観測はありますが、基本的には飛行機が運航している邪魔になることが考えられるので、国際法では事前に気球が飛ぶことを知らせておくルールがあります。

気象観測用なら事前に全世界向けに周知が必要

全世界向けに航空機の安全運航のために例え気象観測目的の気球でもNOTAM(ノータム)と呼ばれる情報を発行する必要があります。

NOTAMとは

『Notice to Airmen:ノータムのことで、航空保安諸施設、業務、方式及び航空に危険をおよぼすもの等の設定、状態又は変更に関する情報で、書面による航空情報では時宜を得た提供が不可能な場合に通信回線(CADIN及びAFTN)により配布されるもの。』(国土交通省用語ページより抜粋)

https://www.mlit.go.jp/yougo/e-n.html

航空機運航、空の安全では墜落しなくても重大事故につながる可能性あり

日本国内でも2020年宮城県上空に見られ、当時は国籍不明ですぐに消えたので何の対処もされませんでしたが、万が一の事故でさえ重大インシディデントの航空事故では気球そのものが墜落する可能性は低いから対応しなくても良いという発想は航空機運用の世界からはちょっと信じられない考え方です。

もちろんNOTAM等で事前に気球が気象観測用なので破壊しないでくださいと通知があれば静観するでしょうが、それでも「予想外の進路をとりコントロールできない」となれば航空機の安全確保のため撃墜を視野に入れるでしょう。

航空機の運航で小さいけど見逃せない事象の排除例

自衛隊の飛行場では定期的に滑走路を多くの人間で一斉に歩き小さな金属ごみを拾う作業が行われます。

これは小さな金属片でも航空機エンジンの吸気側から吸い込むとエンジンにダメージが発生し、飛行中のエンジントラブルを防止するために行う作業です。このほかにも様々な事故防止作業が日々行われるぐらい神経を使っています。

本当に気象用か?

翻って、アメリカで偵察用とされた気球の直径はバス3台分とのことですが、ニュースソースがアメリカのものであればアメリカサイズのバスとなるでしょう。調べてみるとアメリカの市内用バスの長さが14〜15m程度なのでこの気球は直径だけなら45m程度となる様です。

中国国内においても外国の航空機が飛行するはずなので、一応NOTAMを発行しておかなければなりません。

しかしどうやらNOTAMを発行していないため「誤ってアメリカに侵入」との発表は怪しいと思われて仕方がないでしょう。

撃墜された気球の残骸や装置は米海軍により改修されたそうで今後の発表で本当に気象観測様だったかどうか分かってくると思います。

追記2023年2月8日

米海軍を通した発表では高さ60m程度、重さは900kg程度だそうです。高さとあるのは気球+吊り下げられた機械を含むのでこのような表現になっている様です。

おまけ 海上自衛隊気象海洋員の紹介

https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/details/job/kaijo-kisho-kaiyo.html

海上自衛隊ですが、哨戒機やヘリコプターなどの航空機も保有していますので飛行場が全国にあります。

パイロットはもちろん航空管制官や航空機整備員、そして私の職だった気象観測が職種としてあります。

気象海洋員は、将来的には幹部自衛官となって気象予報士の資格を取ることができるチャンスに恵まれています。

以上です。


元海上自衛官に対するマスコミの扱いについて/海上自衛隊で多種火器類を扱える職種は限られます

まず令和4年7月8日、安倍晋三元首相の逝去に対し哀悼の意と最敬礼を捧げます。

事件は同日の午前11時30分頃、場所は奈良県での自民党選挙候補者の応援演説中のことなのはニュースやSNSで広く知られていると思います。

当初、ニュースでは安倍晋三元首相は至近距離で撃たれたとのことで、その後ニュースで続々と情報が更新されました。

そして私に大きく引っかかったのは41歳の容疑者が「元海上自衛官」と言う情報でした。

容疑者の「海上自衛官」としての経歴

ニュースによりますと容疑者は2002年から2005年まで広島県呉市にある呉地方総監部の所属だったと考えられます。

この3年と言う期間は、2002年当時の練習員課程、2022年現在では自衛官候補生としての採用だったと推測します。

海上自衛隊練習員課程とは

任期制隊員と言う、一定期間の勤務を行う採用です。

陸自は2年を1任期としていますが、海自と空自については1任期めが3年で2任期以降は2年を任期とする単位で勤務するシステムとなっています。

ありふれた表現をするなら契約社員です。

昇任し曹と呼ばれる階級になれば本格的な職業と言えます。昇任後の話は脱線しますので割愛します。

事件では改造銃のようなもので襲撃したように捉えられます。しかしマスメディアの報道を、自衛隊を知らない人が見れば

「海上自衛隊は散弾銃を使ったり、自作できることを教えて射撃訓練しているんだ」

と捉えられてしまいかねません。

「海上自衛隊は危険なことをする」

と言う印象が植え付けられてしまう人がいても不思議ではありません。

しかしこれを明確に否定します。

1任期目3年で扱える火器類が複数経験できるのは限られた職種

海上自衛隊に練習員課程で入隊して始めの5ヶ月の訓練では、2002年当時なら間違いなく「64式小銃」と呼ばれるアサルトライフルしか訓練では用いません。しかも射撃訓練は3回程度しか行わないはずです。

一部報道では銃の構造の知識を身につけていた記述もあります。

しかしまず、64式小銃の構造は部品数が多く教務で行う分解結合、整備手順はほぼ記憶に残らないと言えます。ましてやアサルトライフルなのでセミオート・オート機能がついていますから襲撃に使われるような銃の構造とは全く違います。

陸自普通科隊員なら目隠しをした状態でも分解結合ができるような訓練を受けるとは聞いたことがありますが、それも64式でなくより新しく部品数が少ない89式小銃での話です。

教育期間が修了すれば艦艇または海上自衛隊の航空基地勤務となりますがここでも64式小銃の射撃訓練は年1回程度になります。

そのほかの火器類を触れる職種は2002年当時なら基地警備職か特別警備隊員しかありません。

特別警備隊について言えば、かなり優秀な任期制隊員なら進めるコースで1任期で退職すると言うのは稀なケースと言えます。

小銃整備については武器整備の専門職になれば行います、が訓練で使用する以外は一般隊員は触れられないよう武器庫に格納されています。

従って仮に構造の知識を得たとしてもそれだけ触れる機会もましてや射撃訓練もおそらく5回程度しかないのに17年もその記憶を正確に維持できるとは考えられません。

それよりはインターネット検索で調べる方がよっぽど正確な情報が得られるでしょう。

「元海上自衛隊」をマスメディアが強調する理由

毎年7月1日から9月末にかけては翌年に18歳になる方が各種自衛官等募集採用試験に申し込める期間となります。

募集採用・広報にも関わった私だからはっきり言えますが、7月から10月はこの入隊希望者を減らすのに影響するニュース、報道がテレビ等で自衛隊に対してのネガティブなものが増える傾向があります。

採用について触れたブログのリンクを貼っておきますので参考にしてみてください。

強い意志を持って入隊希望する方ならネガティブな報道に左右されることはありませんが、進学や他の就職先と迷っている人には影響します。

マスメディアがどのような理由を持ってそのようなニュースをしようとするのかは何とも言えませんが、事実として結果的に自衛隊希望を選択しなくなるケースを私は直に見ています。

ひとまずは端的にブログを書きました。

繰り返しとなりますが、安倍晋三氏へ最敬礼。

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以上です。