自衛隊の教育システム/学校現場が活用できる組織的に教育を行う効率的なやり方

学校の教育現場でのいじめや生徒親子とのさまざまな問題・事件がニュースに頻繁に出てくるのですが、自衛隊での教育システムと比べると問題点のいくつかは解決できるのではないかなと常々感じるので、比較しながら解説していきたいと思います。

目次

自衛隊の基礎教育カリキュラムについて

自衛隊は陸海空で若干期間は違うものの、最初の基礎教育を3〜5ヶ月かけて行います。

この間に基本的な個人・集団行動、警備術、戦闘術、応急手当て、装備品の取り扱い、体育などの教育を受けつつ、自衛隊で勤務する上で必要な躾要素を身につけていくようになります。

座学はほぼ同じ

教育自体は学校教育とほぼ同じようなタイムスケジュールで1時限50分程度で、日によって違いますが6〜8時限ぐらい

担当教官が教範(教科書テキスト)を元に黒板、ホワイトボード、PCなど使って座学(授業)を進めていきます。 

これらについては課題やテストが定期的に実施されます。

まさに学校の授業と同じですね。

教育をする人と躾をする人は違う

躾は誰がするの?

服装や生活面での躾についても陸海空で若干異なりますが、教官の中でも生活面・躾面の担当隊員が指導をします

もちろん他の教科を実施する教官も確かに躾もしますが主体になるのは担当隊員です。

普通の学校では担任の教師が自分の担当教科と同時に躾を実施するとは思いますが、自衛隊においてははっきり分けています。それにはちゃんと理由があります。

躾は決して楽なものではない。

まず躾は座学と違い生活面での話となり、時間としては17時〜翌日8時までの長時間でしかも夜間に及びます。

自衛隊ではこの大変さがわかっているので専任の担当隊員が置かれます。

陸上自衛隊であれば「班長付」「助教」と言って若くて優秀な面倒見の良いとされる隊員が選ばれます。班長付や助教になる隊員は昇任もかかってくるのでやる気はもちろんですが、無茶な指導をしない安心感があります。

何よりほとんどの場合、同じ駐屯地内で寝起きするので何かあってもすぐに新隊員の元に短時間で駆けつけます。

普通の学校では、生徒にとっては学校から離れて自分の自由な時間ですが教師は指導者としての責任を持たされていますよね。

連帯責任やペナルティは確かに行われるけど効果は小さい

自衛隊では躾・規則に従わない隊員に対して最大の行使力として「連帯責任」があります。

腕立て伏せやランニングなどがありますが、厳しく躾教育をするのは大体最初の1ヶ月程度です。

そこを過ぎると教育を受ける側が自主的に躾を守るようになります。

それはなぜかと言うと腕立て等がきついと言うより、体力以上に貴重な自由時間を取られるほど嫌なものはありません。

誰かのミスで自由な時間が奪われるのは苦痛ですが、だからと言って「お前が悪い」と言うように個人を責めるのも間違いというのが根底になるように躾けられます。

そうなると、おおむね2ヶ月目以降は同じ班員同士で気をつけるようになって実質的な躾の指導が減っていきます。

ここらあたり気づくのは、躾は教育されるだけでなく、お互いが気持ちよく過ごすために自分達で改善して守っていくこと、と言うことです。

また躾の指導について学校と大きな違いが一つあります。

それは担当者が指導する人数が、多くても10人程度というところです。

学校では1クラスの指導を担任教師が行うようになるので概ね35人前後でしょう。

関わる時間の濃さも違うと言えますが、1人で30人以上の躾をするのはかなり難易度が高いと言えます。

指導しやすくなるとしたらやはり10人につき1人の教員又は指導員を置くのが理想でしょう。

昭和の時代なら生徒が言うことを聞かなければ殴る、それこそ自衛隊ばりの連帯責任など力で指導する等やっていましたが平成の半ばあたりから問題視されて無くなっているはずです。

教師の言葉だけの指導の効力は格段に小さくなっていることは近年の学校問題ではっきりしてきています。

服装は身内の話

躾の延長とも言えますが、自衛官の服装についても指導等はあります。

自衛隊では服装規定があるので当然ですが、服装を整えて綺麗に着用することは、国民の方々から納められた税金で貸与している制服を管理整備して大事に扱っています、という「官品愛護」の意思の表し方の一つです。

従って、自衛隊生活が長くなるほど制服を綺麗に着こなす習慣が身について来ます。

何よりきちんと整備され見事に着こなした隊員がいる部隊は統制が取れて精強である証とも言えます。

心情把握も大事な要素の一つ

そして、おそらく教師と教育隊での違いは心理面のケアかなと個人的に考えます。

自衛隊での教育は新隊員と教育担当者が近い存在であるので個人の性格や癖なども知りやすくなります。

苦手なもの不得意なものも把握することでより個人の能力を伸ばす指導を心がけています。

個人の悩みなどは、ただ日中の生活を見ているだけでは把握しきれません。

一緒に同じテーブルで食事をし、風呂に浸かるなどして初めて心の本音の端っこが見えてくるようになります。

心情把握自体は教育隊だけでなく、一般隊員でも階級が上がり人事管理をする立場になれば誰でも行いますので、私もある程度は部下の心情把握スキルを有しています。

しかし、一般の教師は生徒にそこまで関われるのでしょうか。不可能と考えますし、そもそも科目を教員免許はあっても、心情に触れることは全くの範囲外とも言えます。それが仕事の一部というなら科目教育や学校での事務の給与だけでは低すぎます。もっと給与を上げるか、心情把握は専門の職員を置くことが合理的と考えられるでしょう。

トラブル時の対応

そしていじめなどの問題が起きたらどうするかについて解説します。

よくニュースなどで見られるいじめなどは学校や教育委員会が原因の調査を行なって関係者に報告するなり記者会見を行うのが慣例です。

では自衛隊だとどうなるか。

自衛隊ではイジメはありません。

なぜなら学校教育でいうイジメは、明確な暴行傷害事件となります。そうなると、教育担当者だけでは解決不可能となりますので、警務隊という組織に預けることになります。

警務隊は自衛隊内にある警察組織です。

警務隊について簡単に説明すると、警察のような存在というより逮捕権は元より逮捕術、捜査術などの教育を受け、時には警察と連携し自衛隊内での犯罪者の取り締まりを行います。自衛隊内での暴行事件、窃盗事件、不審者取り締まりなどを行うまさに警察です。

参考:陸上自衛隊警務科紹介ページ

そして教育隊の新隊員だけでなく教官も捜査対象者として事情聴取されます。嘘をつけば逮捕されるので当然、真実を話すことになります。警務官・警務隊は全くの別組織ですから下手な誤魔化しや隠蔽等は通じません。

学校教育の現場が良くなるには

既になんでも教師が行う昭和の教育スタイルは限界がきています。従って考えられる合理的な組織としては

警察官常駐ほか心療系の専門医、弁護士など常駐またはすぐに駆けつけてくれるプロフェッショナルと契約することが急務と言えるのかなと個人的には思います。

現にアメリカはそうなっていますね

よくある服装や髪型の問題も生徒や保護者で、どうしたら快適な学校生活を送れるかを考えてもらい自主的にやってもらうのが良いやり方でしょう。教師がそこまで踏み込む必要はもうありません。

そもそもですが、日本教育の現場は自衛隊を敬遠しています。

しかし自衛隊は効率的かつ合理的な教育手法を海外のミリタリーから先進的に取り入れて常にアップロードをしています。

広報官として学校にも出入りしていたこともあり如何に学校が、教師が古い慣習によって非合理的な状態にあるか知っていることもありこのブログを書きました。

学校の先生は自衛隊の教育システムの研修をやってみることを強くお勧めします。

自衛隊の教育は他にもさまざまありますが、新入隊時の教育が間違いなく一生忘れられない思い出になります

以上です。