(2020年2月29日)
2012年3月17日に地元の青谷(あおや)海岸にクジラの仲間のオウギハクジラ(wikipediaの解説)が流れ着きました。そのハクジラを助けようとした時の経験を書いていきます。
結論としては、何度か泳げる深さまで連れいて行ったものの助けることができず死んでしまいました。
簡易的な記録はこちらの下から3番目の欄です。
サーフィンをしようと地元の海を通りかかった時、波打ち際に大きな黒い丸太のようなものを見つけました。丸太にしてはデカいし何かヒレのようなものが揺れていたので気になって車を停め近くまで見に行ってみると形はイルカのようでしたが、今まで見たことあるイルカより随分大きく、知識として持っていたハクジラじゃないかと直感で判断しました。
頭付近にある呼吸をする噴気孔から時折、海水を吹き出していて生きていました。ちょうど同じタイミングで他の人たちも近づいてきましたが、3月の海で水温は低く、普通の服では海に長時間はいる状況ではありませんでした。
すぐに車に戻り積んでいたサーフィンの冬用ウェットスーツ(正確にはセミドライスーツ)に着替え、念のため作業用グローブを付けてハクジラが自力で泳げると思われる深さまで誘導しようと海に入りました。続くように知り合いのサーファーも同じようにウェットスーツに着替えて、力を合わせて沖に向かわせようとハクジラの体を押し始めました。
弱っていた様子でしたが、胸ビレや尾ヒレを動かしていたこともありなんとか自力で泳げる沖まで出せればと、この時は思いました。
記録でみると体長484センチとそこまで大きくない感じがするかと思いますが、実物は普通車より一回り大きいサイズと感じました。クジラの体の下側は海水に浸かっていたのでなんとか少しずつ沖に動かすことができました。2人のサーファーがヒレ部分を押し、俺が口先を持って引っ張りました。
ハクジラの口先を持った時に気付いたことは、イルカのように細長くなっている部分にフジツボのでかいヤツがついていて、そいつがイカの足のようなピンク色の触手のようなものを出していました。
始めはこの触手がロープに見え、絡まったことによる衰弱かと思いましたが、20センチ程度で絡むほどの長さはありませんでした。それでも海岸にいる藤壺の触手よりは断然ながいですし、ピンク色なので驚きました。そして殻が鋭く、もし素手で触っていたら掌がズタズタになっていたでしょう。
また押しながら、噴気孔からでる潮が何度かかかりました。ちょっと潮臭く、直感的に何かの病気になるかもと頭をよぎりましたが、それは体調不良になってから考えようと押し続けました。
そしてなんとかクジラが自力で泳げる深さまで到達すると、ゆっくり沖に向かい始めました。助けられたと思いましたがしばらくすると、また浜に向かうように泳ぎ始めました。
打ち上がる前にもう一度沖に向かうように押しましたが、同じようにしばらくしてまた浜に向かってきました。
この後、地元の漁師さんにも手伝っていただいて結構、沖まで連れていったんですがやはり浜に戻ってきてしまいました。
手の打ちようがなくなりました。最期は行政で浜に一旦埋めて骨格標本として県立博物館に持ち帰ったとのことです。
ネットで調べてみると、クジラの場合は海岸に上がってしまうと自分の体重で内臓が潰されて、内臓破裂のような深刻なダメージを負うようです。また事例として何度も浜に戻ってしまうことも見つけました。
噴気孔から出る潮は、人間にとって未知の感染症になるおそれがあるようです。海から上がってすぐに顔を洗ったりうがいをしたお陰か、感染症のような症状は一切出ませんでした。
また、たびたび尾ヒレを勢いよく振っていたので当たりどころによっては救助する側に重傷を負う可能性があるかもしれません。尾ヒレに近づかないように声をかけながら押すように心がけました。
加えて筋トレしていた成果を発揮できたとも思いました。並みの筋力では到底動かせなかったと思います。
クジラを助けることは、2度と経験することがないだろうと思います。
せめて、彼が、またクジラに生まれ変わっていますように。

以上です。