私、よしっさは、海上自衛官勤務時に広報官という自衛隊の入隊試験を受けてみたい高校生や大学生、社会人など対応や実際に入隊した人たちのサポートをする業務に携わった事があります。
普通の企業であれば採用人事的な仕事です。
そんな私が自衛官の採用の窓口として一般の方に説明するように、自衛隊・自衛官に対してよくある質問などについて説明したいと思います。
目次
自衛官について
社会的な身分としては特別職国家公務員です。
仕事は日本国・日本国民の命と財産を守る人材です。
警察との違いは、警察組織は基本的には日本国内の治安維持のため悪い人を捕まえたりしますが、自衛隊・自衛官は国外から警察では対応できないくらいの武力対して政府の命令を元に対応します。
またテレビでもよくみるとは思いますが各種災害地域や被災者への対応、ここ1年以内では医官(医師資格を持つ自衛官)や看護官(看護師資格を持つ自衛官)など医療資格を持つ隊員なら医療支援で活躍されているのが目だっているかなと考えます。
自衛官になるには?
様々なコース(種目)があります。
- 高校を卒業していなくても18歳以上33歳未満で入隊する「自衛官候補生」「一般曹候補生」
- 高卒から23歳未満のパイロット養成コース「海・空自衛隊航空学生」
- 高卒から21歳未満「防衛大学校学生」
- 医師を目指す「防衛医科大学校医科学生」
- 看護師を目指す「防衛医科大学校看護学科学生(自衛官候補看護学生)」
- 大卒程度(必ずしも大卒じゃないといけない訳ではありません)向け、将来の組織運営が主体となる「自衛隊幹部候補生」
- 社会人向けの中途採用(国家資格保持者等)が主体になる「技術海上幹部・技術航空幹部」「医科・歯科幹部自衛官」
があります。
ではタイトルに準じて今現在17歳から32歳で高卒程度(中卒、高校中退でも受けられます)の学力でなれるコースについてのみ今回は解説していきますが、主体は9月半ばから試験が行われる自衛官候補生と一般曹候補生にしたいと思います。
自衛官候補生について
自衛官候補生とは
実は自衛官ではなく「自衛官候補生」は入隊してから3ヶ月の教育訓練終了までの呼び方となり「防衛省職員」の身分となります。
給料(給与)
このため入隊してから3ヶ月間は給料が142,100円(月額)となります。
ただし3ヶ月間の教育訓練を無事に修了すると月額給与がアップします。
- 高卒:月額179,200円
- 大卒:月額198,100円
2021年6月時点での給料なります。人によって学歴、職歴等により変わって来ます 。
加えて自衛官に採用されたことにより一時金として高卒なら221,000円が別途支給されます。しかし自衛官になってから1年3ヶ月未満に退職した場合、返還する義務が発生します。
そして「2士」という階級が付与され「自衛官」任命されます。
自衛官候補生から任期制自衛官へ
自衛官になったとは言え、自衛官候補生からなるのは「任期制自衛官」です。
陸なら2年を1任期とし、海空自衛隊は1任期目は3年、2任期以降が2年を単位とする、いわゆる契約社員のような扱いとなります。
自衛官候補生(任期制自衛官)の特徴
任期満了金
任期満了時には任期満了金として、退職しなくても、陸なら2年間の勤務で約58万円、海・空なら 3年間の勤務で約95万円、2任期目で約145~151万円が毎月の給料、年2回のボーナスとは別に支給されます。
仮に勤務期間が5年程度なら200万円余りで、毎月1万円でも積み立て貯金していれば比較的少ない分の大学奨学金を返せる額になるかと思います。
加えて海上自衛隊の艦艇勤務になると30%前後の乗組手当等加算されます。
3曹昇任試験
任期制自衛官から定年が確約される本当の意味での公務員扱いとなるのは3曹に昇任してからといえます。
早くても入隊してから3年6か月以上経過しないと受験資格が発生しません。
1年に1回の試験で在職中は何度でも受験できます。
曹昇任後定年までに勤める階級役職にはよりますが定年52〜60歳となります。
今後は定年延長も検討されていますのでもっと伸びる可能性はあります。
また一部の職種では階級を維持したまま再任用制度もありますが、職務内容が制限されるので月額の給与は現役自衛官より下がってしまいます。
任期満了後の再就職等進路
3曹昇任を希望しない者、努力したけど試験合格に至らなかった者には再就職先を防衛省が探してきてくれます。
もちろん自力で探すことも問題ありませんが、厚待遇の内定がもらえるようです。
また大学進学を考えている方には、予備自衛官になることを条件に学費の補助金が得られる制度があります。
自衛官候補生の試験について
受付期間・試験日
防衛省・自衛隊のホームページの試験日のスケジュールをみても明記されていません。
実は都道府県ごとで試験日が違っています。
各都道府県にある「地方協力本部」ホームページには明示されます。
高校3年生向けには概ね9月半ば〜下旬ぐらい案内されます。
また、地方によりますが自衛官候補生の入隊試験は1年間に複数回行われます。
このため、何度も受験にチャレンジする方がいます。
その他の一般曹候補生等の試験日は概ね全国一律になります。
自衛官候補生試験の内容
学力テストは高卒程度の国語、数学、地理歴史および公民となります。
2020年までは中卒程度となっていましたが、2021年の採用より大きく変わりました。
ただし選択式問題なので分からない問題でもとりあえず5つの選択肢から1つ選んで答えとけばもしかしてと言うのもあります。
それとは別に与えられた題名に対して500字程度の作文があります。
適正検査、身体検査、口述試験(面接)があります。実施される地方によっては複数日に分けられることもあります。
過去問については市販されていますが、繰り返しになりますが2021年で試験問題レベルが変わると見られるのでご注意ください。
合格倍率
自衛官候補生の倍率は経験的にそこまで高くはないと感じますが、近年は1〜3倍程度と見てはいます。また陸海空でも倍率が変わっています。また女性については一層倍率が高いと思ってください。
一番合格しやすいのは陸です。次は海、最後に空です。採用人数の違いによるものが一番大きいですね。
不合格になるのは…
不合格になる可能性が高いのは学力よりも身体、健康面です。
いくつか例を挙げると、比較的重度のアレルギー性の疾患(喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー)や視力、色覚異常。
また太り過ぎなども募集要綱上での基準値外だと不合格になりかねません。
また学校では検査していない肺活量などもたまに足りない方がいます。これはテクニックがありますのでもし知りたい方コメントに打ち込んでいただければと存じます。
学力は事前に勉強すればなんとかなりますが、身体面は改善しないことがほとんどです。
またごく稀ですが犯罪歴がある人は不合格になります。
従って偏差値の高い進学校、有名大学出身の受験者が合格できない場合が少なくありません。
完全に倍率無視のクリティカルで不合格です。
身体面で、どの程度なら大丈夫なのかは担当になった広報官に聞いてみてください。
身体検査の基準についてはパイロットコースの航空学生はより厳しくなりますので受験を考えられる方はよく確認すること!ちなみに近年の航空学生の身体基準の視力だけで言えば0.2以上であれば眼鏡・コンタクトを使用していても良しとされています。
自衛官候補生採用要項
詳細は以下のリンクを参考にしてください。
一般曹候補生について
一般曹候補生とは
自衛官候補生との違いは、入隊時点で2士の階級が与えられ自衛官の身分が与えられます。
従って給与は高卒であれば月額179,200円、大卒等であれば同198,000円(ただし入隊してすぐの4月の給与は日割計算となり若干少なくなります)
そして任期満了や任用一時金などはありません。
最大の違いは「3曹」になる条件とスピード(昇任時期)
自衛官候補生から任期制自衛官になった者は「3曹」になるために学力、訓練成果をみる昇任試験に合格しなければなりません。またこの試験を受けられるようになるのは「士長」の階級になっていて、早くても入隊してから3年6か月以上経過しないと受験資格が発生しません。
しかし一般曹候補生であれば入隊してから2年9か月以降に部隊での訓練成績や技能取得状況など評価して選抜で昇任します。
選抜となりますので年齢は関係ありません。若くても早く昇任できる可能性が十分あります。
「曹」の階級になると職域のプロフェッショナルとしての選択肢が増えます。
一般曹候補生試験について
受付期間
自衛官候補生とは違い2021年の受付時期(第2回)が7月1日から9月6日と明示されています。
応募資格は自衛官候補生と同じです。
試験日
1次試験9月16日(木)〜19日(日)のうち指定する1日となります。これも地域によりますので受付の時に説明をされます。
1次試験を合格すると10月4日以降に2次試験実施日が別途示されます。とは言っても複数の試験日が示されて受験可能な希望する日となるのが例年のやり方です。
試験の内容
1次試験
学力テストは高卒程度の国語、数学、コミュニケーション英語となります。解答は選択式のみとなります。
作文は700字となります。
適正検査も実施されます。
2次試験
口述試験(面接)と身体検査となります。
身体検査基準については自衛官候補生試験と同じです。
過去問については市販されています。
倍率
当然ながら自衛官候補生の倍率より高くなります。
近年は3〜7倍程度と見てはいます。特に女性自衛官の枠は狭き門と言えます。
一番合格しやすいのは陸です。次は海、最後に空です。採用人数の違いによるものが一番大きいですね。ただし空に関してだけは男女の区別なく募集採用されます。
不合格になる場合
自衛官候補生と同様です。
自衛隊一般曹候補生採用要項
詳細は以下のリンクを参考にしてください。
一応、Amazonで購入できる試験対策問題集のリンクを貼っておきます。
よくある質問と回答例
ここからは自衛官候補生、一般曹候補生を含めよく聞かれた質問と回答をしていこうと思います。
他の自衛隊試験と併願できますか?
できます。
というか自衛官候補生、一般曹候補生の併願は是非して欲しいところです。
航空学生、防衛大学校学生等とは勉強時間が分散されることを考えるとおすすめできないかもしれません。
他の公務員試験や企業と併願できますか?
できます。個人の自由です。
他の公務員試験や企業の受験については自衛隊側が口を出すことではありません。
ただし受験日が被る時はご自分でどちらを選ぶか決断してください。
大学受験と併願はできますか?
通っている学校の先生や進路担当者と相談してください。
特に一般大学や企業の推薦入試を受ける方は、自衛隊と併願すると大学や企業の推薦自体を取り消される可能性が非常に大きくなります。
理由は、大学・企業への推薦は「ほぼ確実に大学に入学できる、入社できる」「本人がその大学や企業を最優先で希望している」ことが前提で、これは通っている学校が大学側、企業側に信頼されているためです。
合格したら絶対入隊しなきゃいけないの?
辞退出来ます。
最終の合格通知書と一緒に入隊承諾・辞退書と言うものが手元に届きます。20歳未満の方であれば保護者の方の署名が必要になりますが、辞退は可能です。
人によっては他の進学、企業へ内定が決まったりと事情がありますので辞退するのはおかしなことでは有りません。
また入隊前に大きなケガなどで入隊できない場合もありますので、訓練出来ないとなるとやはり辞退または延期となります。
前に辞退したけど、また受験できますか?
できます。
自衛隊や広報官は大喜びします。ただし合格になると保証はありませんので勉強はしっかりしましょう。
合格して入隊してからも別の自衛隊の試験を受けられますか?
航空学生、防大生他、年齢条件に当てはまるなら可能です。
試験の申し込みについて
学校の進路指導室、役場などお住まいの地域の各自治体、各都道府県に自衛隊地方協力本部(北海道だけは複数あります)、街中の募集事務所、地域事務所等、駐屯地、基地に問い合わせてみてください。
できれば、先輩後輩、近所に住んでいて仲の良い現役自衛官の方がいたらその人経由で申し込み手続きをしていただけると、そのかたの勤務評価アップになります。
航空学生、防衛大学校学生、防衛医科大学校学生について別に書きたいと思います。
おしまいに:不合格になってしまった場合とこれからについて
基本的には受験可能年齢であれば、何度でも試験は受けられます。
しかし、何度受けても不合格になってしまう方がいるのも事実です。
理由としてはやはり身体面が大きいですが、そのほかの理由もあるかもしれません。
国防の形は自衛官になるだけではありません
「自衛官じゃないと国を守れない」
と思い込みがちですが、普通のサラリーマン、アルバイトだとしても働いてお給料をもらう方は所得税、何か購入すれば消費税等の税金を国に払っています。
みなさんが納めた税金を予算として防衛省自衛隊は運用されています。つまり国民誰しもが国防に関わっています。
より高い収入を得て、より多く税金を日本国に収めることが国防に大きく関わります。
普通に働くことに自信を持ちましょう。
転職・再就職などを考えられている方には職業訓練校・ポリテクセンターへの入校をおすすめします。
職業訓練校・ポリテクセンターに通おう/資格につながる教育を受けながらお金も受け取れる場合もあります
以上です。