夏前6月〜7月(沖縄などの南西諸島は4月〜5月)の梅雨前線や夏の終わりから9月に現れる秋雨前線のほか日本に年に何度も現れる停滞前線について解説したいと思います。
目次
停滞前線の現れる条件
気団と気団の境目に現れやすい
停滞前線は大陸の気団と太平洋側の気団の勢力の境目にあたるところとなります。
寒冷前線や温暖前線は温帯低気圧の中心から伸びることがほとんどですが、これは温帯低気圧の発達に伴い気温や風向きの顕著な変化場所をイメージ化したものとなります。
特徴
温暖前線や寒冷前線と比較
停滞前線には温暖前線と寒冷前線両方の性質が現れます。
そうは言っても同時に温暖・寒冷それぞれの性質が現れるわけでありません。
南から北へ移動するとき(北半球の場合です。)は温暖前線のような性質をもち雨の降り方に大きな変化がなく持続的な雨が長時間にわたり続きます。
北から南へ移動する時は寒冷前線の性質のような雨雷が激しい現象が降ったり止んだりを繰り返すように断続的現れます。
豪雨につながるケース
台風+停滞前線は豪雨の組み合わせ
よくあるパターンとして、日本列島に停滞前線があり、南海上に台風がある場合です。
停滞前線は南から北へと押し上げられ本来なら温暖前線の性質の雨となるはずです。
ところが台風によって暖かく湿った大量の空気が前線に運ばれ雨となり、この時に山地の斜面を駆け登るような風向きの場合、豪雨につながりやすくなります。
加えて台風の風で暴風雨につながりやすくなります。
太平洋高気圧の張り出し+停滞前線
太平洋高気圧の縁に沿って南西の風で湿った空気が運ばれて大雨につながりやすくなります。
主に梅雨の終わりに現れやすいパターンとなります。
2021年7月3日に熱海市で起きた土砂災害ほか全国的に河川の氾濫や土砂災害が起きた時の地上天気図を見ると、関東南部から九州の中部付近に渡って停滞前線が解析されています。
台風は解析されてはいませんが大雨につながるケースとなります。
特に大雨に警戒する条件
日本の場合、南西寄りの風で湿った温かい空気が運ばれてくる
台風がなくとも湿った温かい空気が流れ込み、特に山地斜面に対して駆け上がるような雨雲の動きとなる場合で、さらに上空の寒気があると雨雲・積乱雲が発達しやすくなります。
停滞前線解析方法
ここからは地上天気図での解析・描画方法の目安を描いていきます。
地上の風
地上の風向きが同一方向のところに注目します。停滞前線の影響下だと寒冷前線と違い風速はそこまで強く現れません。
高湿度分布
地上のアメダス観測地点を確認し湿度の高いところに注目します。
ひまわり雲画像
赤外画像を主に見て、白い雲が線状だったり塊(クラスター)状に分布しているところに注目します。
また停滞前線においては水蒸気画像も参考にします。
一般的には馴染みが薄い衛星画像ですが、水蒸気画像とは文字通り水蒸気が多くあり湿度の高い部分が白く強調される画像です。
レーダー画像(雨雲レーダー)
当然ですが強い雨の現れているところに注目します。
2021年6月17日から注目されるようになった線状降水帯はわかりやすい目安になります。
線状降水帯について書いたブログのリンクを貼っておきますのでご参考にどうぞ
線状降水帯の情報とは?気象庁「顕著な大雨に関する情報」等の提供による強い雨エリアの新しい呼びかけ
850hPa高層解析図
気象予報士実技試験で停滞前線の解析問題頻出する「等温度線集中帯の南縁」という、等しい温度分布を線で結んだ3℃毎の破線が帯のように集中した解析がされている場合にその最も暖気側や南側の地上付近に停滞前線が描画できるという手法です。
しかし衛星画像やアメダス観測の発達により近年の気象観測現場では入手できる時間が遅く重要視されていません。
停滞前線は日本・東アジア以外にも現れる
停滞前線は日本・アジア地域だけでなくヨーロッパなどの温帯気候の地域では見られます。
私自身が経験した海外の気候では、ドイツ北部の10月中旬ぐらいに現れる秋雨がまさに停滞前線による雨でした。この雨により自転車移動する予定の旅行が鉄道に切り替わりました。
ヨーロッパ旅行10月10日(ドイツ4日目)/10月のドイツは雨の季節
日々、天気図を見る機会がない方もこれらの特徴を掴めれば防災に活かせると思います。
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防災に関するサバイバルテクニック等についてはこちら
令和元年(2019年)台風15号(ファクサイ)の被害から改めて防災士として考えるサバイバルテクニック
以上です。