この記事を書いている時点では防衛省からの発表は墜落事故とされることのみの発表で搭乗者の安否については不明です。
搭乗されていた方の早期の発見を祈っています。できれば生きていてほしいと切に願っています。
目次
概要
- 時間:15:56ごろ
- 場所:宮古島北端から2kmあたり
- 当時の気象状況:宮古島アメダス観測から南の風5.5m /s天気曇り(16:00のデータを参照)
地上天気図とひまわり雲画像も参考にすると、雨は降っていませんがいわゆる積雲のもこもこした雲が空の大部分を覆っている感じかなと経験上考えます。
2023年4月6日宮古島アメダス観測データ
2023年4月6日18時地上天気図
特に気象的な要因については、気圧配置と北にある寒冷前線の影響による乱気流の可能性もありえます。
陸自ヘリUH-60Jについて
当該機は陸上自衛隊多用途ヘリUH-60JAとのことで、文字通り多用途目的でさまざな装備の取り外しができ、人の輸送から偵察任務、救難等も行える機体です。
世界でも陸海空軍に関わらず多く使われている機種の一つ
日本では三菱重工業がライセンス生産を行い自衛隊むけに納入していますが、元々はアメリカのシコルスキー・エアクラフト社が開発したもので世界の20カ国以上で採用されています。
派生系も多く海上自衛隊の対潜哨戒ヘリ、航空自衛隊の救難ヘリと汎用性が高い機体と言えます。
安全性と過去の事故
自衛隊においては2017年10月17日に空自の救難ヘリとして採用されているUH-60Jが機長の空間識失調(バーディゴ)と偶然が重なり墜落したことがありますが、機体トラブルによる墜落は自衛隊では未だないくらい安全性の高い機体と客観的には言えます。
空間識失調(バーディゴ)とは
パイロットが何らかの原因で機体の姿勢感覚を失ってしまい、上下左右の感覚が分からなくなってしまう症状です。
発生は夜間等視界内に自分の空間的位置を判別するものがない状況で陥ることが多いそうです。
1例を挙げると夜間の洋上でのフライト中、空に満点の星が見られそして海にほとんど波がなければ海面にも星が写し出され水平線がわからなくなり空だと思って進んでいたら海面だったという話があります。
これはあくまで、単座機の戦闘機の話です。自衛隊ヘリコプターや普通の航空機は大体複座で2人の操縦士が同じ挙動を取れる様なコックピットの作りになっています。従って空間識失調だけでなく体調不良による意識不明の状態が1人に起きても即リカバリーできる手法をとっています。
乗っていたのは、フライトの目的は
搭乗していたのは第8師団長・坂本雄一陸将他10名(防衛省・陸上自衛隊トップの陸上幕僚長・森下陸将の会見より)
飛行の目的は偵察任務とのことです。
おそらく第8師団長として着任してすぐの管轄地域の視察を兼ねた偵察フライトの一つだったと推測します。
このような視察の場合、随行するスタッフも1佐、2佐クラスの上級指揮官クラスではないかと考えます。ヘリを操縦しているパイロットも幹部の陸上自衛官です。
師団長とは
全国に10個師団がありそれぞれのトップになります。れいか部隊に在籍する隊員数は管轄範囲等で変わってきますが6000〜9000人程度となります。
陸上自衛隊での階級は陸将となり、最高位にはなりますが外国の陸軍に照らし合わせると中将となる他、陸上自衛隊の中では上から2番目の階級と言えます。
しかし組織上の序列でいくと陸上幕僚長、方面総監など上位の役職が存在します。
とは言っても上級指揮官としては限られた自衛官しかなれない階級であり役職となります。
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4月7日以降の続報からの解説
レーダーから当該機が消える2分前に下地島空港管制塔とやりとりがあったとのこと。
また近い時間帯に元米海兵隊員の方が写真を撮影したものがアップされたりしています。その方の証言では「高さ450m(おそらく1500フィート)」「風も強く、時折雨が降っていた」
天候については冒頭の見立てと一致しています。
機体のドアやヘルメットなどの発見されるも4月10日時点では搭乗員が発見されていない状況が続いております。
そしてネットを中心に様々な憶測や疑問が出ていますので以下に解説していきます。
攻撃による撃墜は極めて考えにくい
ほとんどのメディアではC国の艦艇が台湾付近や南西諸島を航行しているとは報じています。しかし宮古島に航空自衛隊の防空監視任務を行うレーダーサイトがあることは報じていません。
航空自衛隊のレーダーサイトはミサイルや領空侵犯を監視する
航空自衛隊のレーダサイトの一つ、宮古島分屯基地の監視小隊業務の一部を紹介します。(リンクはこちら)
「我が国における南西域の空を24時間体制で警戒監視し、国籍不明の航空機等を早期探知に努めています。 また南西空域を飛行する航空機に対する異常接近防止、空中衝突防止のためのレーダー助言業務を併せて実施しています。」
もし外部からのミサイルや戦闘機による接近があれば、領空内で探知しており那覇からのスクランブルや場合によっては迎撃態勢に移行しているはずです。
また撃墜されたとしたら、周囲には爆発音が響き渡り島にいる人たちがその音を聞いているでしょう。
潜水艦による攻撃はもっと考えられない
潜水艦による攻撃の憶測をする人もいる様ですが、潜水艦の最大の利点は隠密性です。
敵に知られず、敵の間近に忍び寄りいざとなったらその中枢なり、最大攻撃力をもつ空母を狙うことを目的とします。
しかし攻撃の瞬間に発射音、魚雷自体が出す探知音などが近海に響きます。これでその潜水艦が逆探知され追跡される様になります。
潜水艦が追跡されるとは、そのスクリュー音が録音され行動が詳細に把握され別の潜水艦の行動把握もされる様になり隠密行動ができなくなり役立たずに成り下がります。これは海洋戦略上ではかなりの損失です。
それだけに各国は自国の潜水艦技術を持ちたがりますし、敵国の潜水艦情報を欲しがります。
その機密の塊の存在が分かってしまうリスクを受けてまでヘリコプター1機の撃墜を狙うのは到底戦略的効果が見込めません。
攻撃があれば周囲に目撃情報がある
また、島から何かしらの攻撃があったとされたなら、島の出入りは封鎖され外出制限がかかるでしょう。
こういった状況が少なくともSNS上で見られません。したがって攻撃による撃墜は有り得ないと防衛省が判断していると考えます。
事故による墜落で救難信号が出ていない
陸上自衛隊のヘリは基本的に手動で操作しないと救難信号が発信されない仕組みになっているようです。
オートローテションで降下していれば着水まで時間が数十秒あり救難信号ボタンをおす時間はあるでしょうが、過去に起きたようなメインローター、テイルローターの脱落が起きると短時間で墜落することになります。
救難信号発信装置は強い衝撃でも自動発信されるとは言われていますが、洋上へ急な落下をする場合、救難信号が発せられるときには海中深くまで行ってしまい海水による電波減衰で遠くまで届かなくなります。これは海中の捜索で音波を使うことからも分かることかと考えます。
オートローテーション
空中でエンジン動力が失われる等でローターが回らなくなっても、下降中の空気の流れでローターが回転し、ゆっくり降下する。
という解説は見られますが、実際はそこまでゆっくり下降するものでは有りません。
私自身は海上自衛隊にいた時何度か研修でSH-60Jという当該機とほぼ似たモデルのヘリコプターに搭乗し、オートローテーション訓練を体験した事が有りますが、降下中は身体が浮き上がるのがはっきりするぐらいのマイナスGが発生します。もちろんシートベルトで座席に固定されているので浮き上がりはしませんが、分かっていても訓練慣れしていなければ何が起きたか分からずパニックになるでしょう。
パイロットはオートローテーションでの下降中に姿勢の制御やエンジンの再始動を行い揚力の回復に努めて、地表面への激突回避をするようにします。
ただUH60はエンジンが2発あり、たとえ1発止まったとしても、もう1発でも飛べる様になっています。
2発とも同時に停止することが実際にエンジン停止が起きるのはこれまた稀です。
何かしらで墜落始めるとパイロットは計器を確認し状況把握に努め、事故の回避動作を取ろうとするでしょう。
しかしその時間が取れないくらい急な墜落であると考えます。
従って、「訓練を受けているパイロットや自衛官が脱出できないのはおかしい」とする意見は否定します。
今後の捜索、フライトレコーダーによって詳細がはっきりしてくるとは思います。
繰り返しですが搭乗者の早期発見を祈ります。
13日午後10時ごろ海底に機体と隊員と見られる姿を発見
掃海艦えたじまが宮古島の西にある伊良部島の北側海底で発見したとのこと。
14日深海での作業を踏まえ飽和潜水の準備に入ったとのこと
海上自衛隊の職種に潜水士(通称ダイバー)がいます。潜水士は掃海艦や掃海艇、及び水中処分隊に所属し主は機雷の敷設及び除去の任務に当たることになりますが、災害派遣での捜索活動に従事することもあります。
海自の潜水士は身体能力、精神面で優秀な隊員の中から選抜し教育
選考試験を受け合格すると専門職種の教育をうけ潜水士の国家資格の取得を目指します。
14日、15日は飽和潜水中止
機材不良、天候不良のためとのこと
16日飽和潜水開始
5人の搭乗員らしき姿を確認、2名を引揚。
17日、先の2名と後の2名の死亡を確認
残る3名の引き上げ作業開始。更に2名を引揚。
後に引き上げた2名の死亡を確認し合計4名の死亡を確認
20日1名の死亡を確認。さらに1名を海底で発見
合計で5名の死亡が確認されました。
21日坂本8師団長の死亡を確認
お悔やみ申し上げます。そして敬礼。引き続き残りの方の捜索が行われています。
5月1日事故ヘリ機体の引き上げ作業開始
民間サルベージ船が隊員と見られる1名を引き揚げた。その後死亡を確認しました。
5月2日事故ヘリの一部を引き上げ
民間サルベージ船によりバラバラの機体が引き上げられました。日の丸のマークが見られテール部分と認識できる箇所もあります。一見して焦げたような後は見られません。
5月7日引き上げた機体の残骸を熊本県八代港で陸上げ
第8師団のある熊本県へ機体の残骸を陸上げしたとのことです。
5月8日6人目の身元確認完了
8師団所属隊員であることが確認されたそうです。6柱の隊員のご遺族の方へお悔やみ申し上げます。
5月24日フライトレコーダーの音声の内容の一部が報道される
エンジン出力低下により機体の体勢維持をしようとするパイロットとコパイロットのやりとりが記録されているとのことです。ただし朝8時時点では陸上自衛隊からの公式発表はまだありません。