2020東京オリンピックでも自衛隊体育学校所属の濵田尚里選手、フェンシング男子エペ団体山田優選手が金メダルを獲得し大活躍をしています。
自衛隊体育学校って自衛隊の学校?どんなところ?と疑問に思っている方が少なからずいるんじゃ無いかと思いますので、元広報官の私が解説します。
目次
自衛隊体育学校の簡単な説明
場所は東京都練馬区にある陸上自衛隊朝霞駐屯地内有ります。
陸自駐屯地内にありますが、学校そのものは「防衛省共同機関」と言って陸海空関係なく運用されるようになっており立派な防衛省の機関の一つです。
1961年から組織され現在に至るまで運用され多くのオリンピックメダリストを輩出している学校です。
秘密の機関というわけでは無いので一般の方の見学受付もしています。
どんなスポーツを取り組んでいるの?
扱われているスポーツはオリンピック種目全般ではなく
夏季
- レスリング
- 柔道
- ボクシング
- 射撃(ライフル競技・ピストル競技)
- アーチェリー
- ウエイトリフティング
- 陸上(マラソン・競歩)
- 水泳
- 近代五種
- カヌー(スプリント競技)
- ラグビー(女子)
冬季
- バイアスロン
- クロスカントリー
など何かしら自衛隊で実戦的に活用できそうな種目が主となります。
自衛隊体育学校は体育指導者を育成する学校です
オリンピック選手の活躍に目を奪われますが、選手育成だけが目的ではありません。
「隊員の体育指導に必要な知識及び技能を修得させるための教育訓練を行なうとともに、体育に関する調査研究を行なうこと。」
これが業務となっています。
陸海空それぞれの教育隊などで隊員を指導する教官を育成する学校でもあります。
言うなれば「先生を育てる学校」ですね。民間には無い発想かもしれません。
もちろん教官として育成される隊員はそれなりの身体・学習能力面を有していないと部隊側から推薦されません。
自衛隊体育学校は自衛官に採用された後に入校できる機関の一つので、学費は一切かかりません。またいわゆる学校偏差値はありません。
自衛隊体育学校にスポーツ選手として誰でも入れるの?
体育特殊技能者として採用・入校するケース
体育特殊技能者はオリンピック候補の選手をスカウト採用するコースとなります。
広報官が行う一般隊員の募集と違い、体育学校のスカウトが独自に活動しています。
スカウト基準についてはどこにも明記されておらず、広報官時代の聞いた話になりますが、ざっくり言って
- 高校生ならインターハイ等8位以内入賞経験者
- 大学生、大学院生でも全日本学生選手権大会上位入賞者
- 社会人なら全日本選手権等大会上位入賞者レベル
体育学校にあるスポーツ種目でこのレベルがスカウト採用する基準と言って良いでしょう。
ただし上位レベルとなると自衛隊だけでなく、大手企業もスカウトが動いています。
しかし最近の傾向は、ある種目において秀でた高校生がいたらスポーツ推薦で大学に入り、大学から実業団等にいる先輩にスカウトされる流れのようで、スカウトの目に止まる選手は高校生あたりから目につけられています。
ただし体育特殊技能者枠での自衛官採用試験を受けても合格する必要があります。そして合格すれば、一般隊員と違い最初から陸海空曹以上の階級が与えらえれ、定年54歳までの身分が確約されます。
一般隊員として採用後に入校するケース
一般隊員枠は他の一般の方と同じでように入隊試験を受けて、合格してからの話となります。
面接時スポーツでの優秀な成績があると評価が上がりますから、アピールはしっかりやっておきましょう。
入隊してすぐの基礎訓練はしっかりやらなければなりません。
そして部隊配属されるようになってから、初めて体育学校の選考の候補者となれます。もちろん部隊勤務をしつつ身体能力を自己管理で維持し続けなければいけないのでハード状況となります。
その後も体育学校の普通の学生か特別体育課程というオリンピック等の選手育成コースになるかの選考が待ち受けています。
もちろん入校できたからといっても基準を満たせなければまた部隊配属となります。
イメージは下記の自衛隊体育学校サイトにあるイラスト通りです。

例として女子柔道78kg級で金メダルを獲得した濵田選手は、柔道経験ではなくサンボ(ロシア格闘技の一つ)の世界大会で優勝した実績がありましたが、入隊は一般隊員として入隊後に柔道を始め、それから体育学校に入校し各種大会で成績をおさめるまでに成長しています。
一般隊員での採用に興味を持たれた方は以下のブログ記事を参考にして見てください。
自衛官採用の話・今17歳〜32歳で就職か進学か悩んでいる方へ/自衛官になるには
入校することのメリット・デメリットは?
他の企業所属やプロ選手と比較して
デメリット
- 基本給(給料)は一般自衛官と一緒(ただし階級・勤務期間によって基本給は違います。)
- 大きな大会で勝っても特別ボーナスが臨時で支給されることはありません。
- 自衛官としての保持する義務や規律に縛られます
メリット
選手引退後も引き続き指導者としても勤務可能
民間企業では引退した選手は企業広報としての効果がなくなるため指導者として育成するのはほぼ無いといえます。
ところが自衛隊だと、体育学校だけではありませんが指導者も活躍できる場所なので、現役引退後変わらず給料をもらい教官などで好きなスポーツを続けられる道もあります。
体育学校出身者でなくとも、余暇に地域の少年スポーツのコーチや審判を手伝って充実した生活を送る隊員も少なくありません。
また自衛官の身分について大きなアドバンテージがありますので、引退後でもスポーツが楽しめればと思う方なら、自衛隊をお勧めします。
ネットでもこれらの情報はほぼ出てこないでしょう。
多分広報官経験者で体育学校希望者を担当し他こともある元自衛官で、ブログにアップするのは私が初めてかも知れません。
以上です。