地震雲って本当にあるの?/元自衛隊・気象観測専門が解説します

(2021年6月18日修正)

巷で言われている地震雲について自衛隊の業務として気象観測経験を元に解説を含め書いてみたいと思います。

2019年6月18日午後22時22分頃に新潟県を中心とする震度6強の地震が発生した際にTwitterにおいて「地震雲が見えた」とされるつぶやきがいくつかあり、それについて気象研究専門の方がそんな雲はないと言う反論のつぶやきをされていました。

明確な地震雲といわれるものは有史以来、未だ観測されていない

私自身は海上自衛隊で10年以上気象観測(基本は航空気象観測)の業務にあたりましたが、ネットなどでアップされる画像の地震雲と言われる雲を私自身が観測したことがありません。

正確には画像の雲は確かに見られますが、それは観測基準に照らし合わせて判別できる雲ということです。

同僚や先輩からも聞いたことがありません。また気象観測記録と言うのは気象庁から30年間保存する規則になっていますので古い資料を勉強のために見たことありますがそのような雲の記述はありませんでした。

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たまたまその観測地点で観測してないだけだろうと考える方もいると思いますが日本を含む世界各地で毎日のように地震が起きています。

地震と雲の関係があると仮定する

地震雲の形は?

地震雲があるとして根拠になる雲を探してみましょう。

念の為、世界での地震雲に関する記述等も考慮し「earthquake cloud」で画像をググってみると、ほとんどが日本でも取り上げられているような筋状の雲だったり、やや濃い煙突から出たような煙状の雲だったりします。

なかには「Japan」と記載されたものもあるので日本から発信されたようにも見られます。

地震雲は高層にある雲にそっくり

これらの雲は気象観測の雲の形や種類で行くと巻雲となります。高度約10000m以上に発生する雲となります。そして濃いめの巻雲が発生する時は上空の風が速く吹いている大気の状態です。

具体的に雲の種類を絞っていきましょう。

出典:気象庁「気象観測の手引き」雲の観測から

上の画像は、気象庁が気象観測の指針として出している「気象観測の手引き」に記載している上層の雲の種類と高度に関連したものになります。

一般の方はもちろん、天気予報に関わっている人でも日常的に雲の高さまで考慮して雲を見る方はかなり少ないと思います。

航空気象観測経験がある人なら雲をみて概ねの高さを1000フィート(300メートル)単位で答えるでしょう。

高層雲はかなり遠方からでも見えてしまう

上空10,000メートル以上の雲は地上の水平距離で200km程度離れた場所からでも観測できます

例えば房総半島の南部の千葉県館山市から富士山近傍の積乱雲が確認できます。その水平距離は100km以上です。

地震雲は地震が起きる場所とかなり離れていても見えてしまう。

もし新潟上空付近でも地震雲が観測されたなら半径100km以内で地震が起きると考えられ、つまり関東でも地震が起きる可能性があるというぐらい広範囲になります

それだけ広範囲なら新潟空港だけでなく近傍の青森、秋田、山形、富山の飛行場にある気象観測所や自衛隊の駐屯地、基地等も観測するはずです。

半径100km以内に地震が起きる可能性だけでは、どこに逃げたら良いんでしょうか?

地震は太古からある現象

地震雲に関する歴史的な資料がない

一般の方が思っている以上に世界中で大きな地震が頻繁に起きています。小さな地震だと毎日起きています。

日本なら3日1回ぐらいのペースで体に感じる地震が全国で観測されています。

地震は大昔からある天災であり、地震や津波に関する伝承はいくつもあり今日の防災知識として活用されていますが地震雲に関するものはありません。

他にも論文の類いを調べてみましたが明確に地震雲を観測した研究結果は見つかりませんでした、どころか否定的な研究結果はいくつも見られますし、海外の気象学の専門家も否定的な意見を述べています。

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そして私自身は平成7年1月17日に阪神淡路の震災の際、研修のため神戸に近い徳島の部隊の気象観測の部署にいて、もし仮に地震雲が観測されたとあれば近傍の部隊では周知徹底されていたでしょう。

全国の飛行場では24時間365日絶え間なく空を観測している

私のやっていた気象観測と言うのは一般的な天気予報等に使われるものとは若干違い、航空気象観測と言われる航空機の運航を安全に行うためのものです。

その気象観測要素の中には雲種類、雲底高度、雲の量があります。それを日中だけでなく夜間も、晴れの日だけでなく空が曇っている時でも観測し続けています。

もし地震雲が観測されていれば、その近傍の飛行場の滑走路にダメージが起きると推測されるので、自衛隊のパイロットだけでなく、民間飛行場も安全に着陸できない可能性が大きくなり、代わりに別の飛行場に着陸の連絡するなどの処置をしなければならず、民間航空会社には燃料や乗客のサポートなど相当なコストがかかることになります。

航空機の安全運航に関わる事象についてはICAO(国際民間航空機関)の国際的な航空運行規則に則ったものになります。(wikiのリンクはこちら

気象庁もひっそりとですが航空機の運航についても触れています。

出典:気象庁

ですから仮に地震雲が観測されたなら、迅速・確実に国内を問わず日本に向かってくる世界中の航空機に情報を伝達しなければなりません

そして自衛隊であれば全体の動きが震源に近い部隊で強化され、地震に備えた態勢に移行するでしょう。

話はずれますが、特殊な雲の「漏斗雲」と言うものがあります。これは乱気流を伴って発生するもので、竜巻の卵とも言え航空機にとっては注意すべき雲です。この雲が観測された場合は注意喚起気象観測のデータにつけるように規則で決まっています。

地震は大昔からあり地震雲があるとすれば記録していないことがありえるのか疑問に感じます。もし明確にあると言い切る研究結果があれば人類の安全安心のためにも是非とも教えていただきたいと存じます。

地震雲や台風などに関するネガティブなニュースやデマほど耳に入りやすいという話からこちらのブログもおすすめです。

FACTFULNESS(ファクトフルネス)を読んで/台風10号で感じたこと、感想、簡単な書評

地震の多い日本列島に住むなら水や保存食などの避難時の持ち出し袋を準備するのが賢明かも。

以上です。