訓練は実戦のように

新幹線の中で3人が殺傷される事件が起きました。亡くなられた方のご冥福をお祈りします。

犯人はナタで女性を切りつけ、それを止めようとした男性が犠牲になったと報道では取り上げられていました。その後、Twitterでは逃げる人の中に座敷シートを外して盾がわりにした人がいたそうです。又、ベルトや上着を腕に巻いてなどで対処するようにすればとの呟きが見受けられました。

どれも相手が銃火器を持っていないとすれば対処として妥当だと思います。ただし、訓練をしていないと動けないと経験上思います。

私自身が暴漢に襲われたり、襲われそうになった人を守った経験はありません。私が経験しているのは、昼食中の食堂で人が倒れたのを介抱したことです。

お昼だったので食堂には30人以上がいました。ところが人が倒れてすぐに行動を移せたのは食堂のおばちゃん一人と私だけでした。私が倒れた人の近くにいたわけではありません。倒れた瞬間は音と何人かのどよめきで何かが起きたと察知して近づいたら白目を向いて口から食べたものを出している男性を見かけましたが、その時はまだ誰も何かしらの救助活動をしていなかったので、自分がやるしかないと判断してからの行動です。

(呼吸、心拍、意識を確認して… )

自衛隊で何度も講習として訓練したことが頭の中で蘇りました。もう一人の介抱を手伝ってくれた食堂のおばちゃんは「AEDを!AEDを!」とかなり慌ててましたが「心臓は動いて呼吸もしているので待ってください。」といさめ、周囲の人に「この人の知り合いか関係者はいますか?」と聞きました。若い女性が「うちの職場の派遣さんです」と答えられたので「では119番に連絡をお願いします。」「あと職場の上司の方にも」とも合わせて伝えました。倒れてからだいたい4分程度の間だったと思います。

症状としては聞いたことない感じでしたが、一先ず食べ物が喉を詰まらせないように口の中から出しました。赤い液体のようなものが食べ物についていたので、食堂のおばちゃんに「ケチャップをつかった料理はありました?」と聞くと「ありません」と。

血が出ているなと判断しました。ただ転んだ拍子に舌を噛んだかのか、胃の方から出ているのかは分かりませんでした。連絡してから7分程度で救急隊員の方が到着しました救急隊員に発生時の状況、処置内容などを伝えて対応は終わりました。

少し話がずれましたが、この食堂は行政関連が多く入所しているビルなのでお客さんはほぼ公務員、もちろん同僚の防衛省職員も何人か食事をしていましたが、ほとんどの人が救助行動に移せなかったのに驚きました。私は自衛官だけど衛生員や救助員などの職種ではありません。年1回、部内で行われた基本の救急訓練を受けているだけです。てっきり公務員なら救急講習を受けているもんだろうと思っていましたがどうやら違うようでした。

救急の方法を知っている人はたくさんいても、そもそも人が目の前で倒れる状況をイメージしていなかったらどうして良いのか判断つかないのは当然です。

話は新幹線の暴漢に戻って、武器はナタです。ナタはある程度太い枝でも切り落とせるように重量が500g程度はあります。500mlペットボトルのキャップ側を持って振り回せばどれくらい勢いがつくか体感できます。それに刃先がついているのでナイフや包丁より攻撃力は高いでしょう。暴漢から逃げるか、逆に懐に入る方が負傷が小さくなると考えられます。

バッグでも服でもなんでも良いから暴漢の視界を奪えるものを投げつけるのが一番かと思います。一番良いのは液体ですね。頭を冷やすのは大事です。

頭の中で状況を想定し行動をイメージするだけで意外と人は実践できます。スポーツでもイメージトレーニングの効果があるが証明されています。もちろん実際に体を動かす方がより効果が高いです。

「そんなこと目の前で起きるわけないじゃん」

でもここ近年、暴漢による無差別攻撃殺人が発生しています。怖いのはだんだん武装の仕方が強力になってきていることと、犯人の知能が高くなっているように個人的には感じます。

日本の駅構内では見ませんが、ヨーロッパを旅行した際は列車から降りてきた鉄道職員がマシンガンで武装していたのを見ることができました。テロ対策なので相手も火器を携行していることが前提なので納得しました。

陸自の訓練の中に「格闘」というのがあります。格闘技と大きく違うのは、敵が素手でなくナイフなどで武装をしていることが前提になっています。単純になんでもありの戦いです。

以前、格闘を指導する教官養成訓練を見る機会がありました。同時に3人に3方向から模擬のナイフ、長めの棒、ライフル銃で殴りかかられるような襲われるのが想定でした。一人の敵を制圧するために馬乗りになっていたら後ろから別の敵に襲われるとかそれこそ日常じゃありえねーと思いつつも見入っていました。

訓練をしておかないと幾ら知識があっても動ける人は少数です。そして実戦に遭遇するときは想定を超える可能性もありますが訓練を積み重ねることで結果は大きく変わります。

訓練は実戦のように、実戦は訓練のように

以上です。

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