日大アメフト部問題・組織としてのマスメディア対応

組織がなんらかの不祥事に関わった際に、トップが顔を出して謝罪会見をするのは危機管理におけるメディア対応の常識になっていると思っていたのに日大の学長が説明会見を開いてない時点で世間一般の印象は非常に悪くなっていると感じます。

連日報道されている日本大学アメフト部選手による5月6日に行われた関西学院大学アメフト部との試合の中での関学側選手に対するタックルでケガを負わせたことについて。

私はアメフトをしたことがないのでルールの話はさておき、関学側に対しては書面での謝罪を行ったようですが5月23日の朝の時点で日大の学長が公の場で会見を開いたようなテレビ報道やニュースは見聞きしていません。

一連の対応を見ていて自衛官時代に広報関係で勤務していた時、組織でなんらかの問題・不祥事があった際のマスメディア対応の手法を学んだ大手の広告会社の講師が行なった研修の内容が頭に浮かんできました。

日本人はなぜか悪いのは当事者だけなのに組織として謝罪なり説明をしないと納得しない性格の人が多く、場合によっては組織に対して不信感、怒りを向け結果としてイメージダウンとなり組織は大きな不利益を被ることになります。

問題が発覚してから速やかに組織のトップが公の場に顔を出して「関係者の皆様に大変なご迷惑をおかけしております」と冒頭で述べて頭を下げるまでが基本的効果ある対応となります。

記者からの想定される質問に対してある程度答えを用意しておき、答えられない質問に対しては「調査等を行い後日発表します」とします。これだけでテレビやニュースを日本人は負の感情をかなり抑えることができます。

日本人特有のためか海外企業からみると理解しがたいようで、悪い例として2006年スイスの某エレベータ関連会社が日本で起きたエレベーター事故の対応で当初はメンテナンスを請け負った会社かエレベーター利用者の操作ミスが問題であって会社は関係ないと住民説明会や会見をしませんでした。しかしニュース等で日本人の怒りの感情が膨らみ始め、結果として社長自ら謝罪会見を行いました。事故発生から9日後のことです。そして企業イメージは著しく悪化したと当時の私は感じていました。

ベン・パー著「ATTENTION」という本の記述に、注目される事件・ニュースのきっかけに「ミステリー・トリガー」という言葉が使われ炎上するツイッターの事例について書かれています。この記述でも批判の対象が何もアクションを起こさない(起こせない)とどんどん炎上が強まることに触れています。

この日大アメフト部の問題について日大は組織としてはどうやらあまり重く受け止めていないようなので監督がマスメディアに顔だしたのは問題が発覚してから10日以上たっており監督、コーチ、選手に丸投げ状態に見えます。いくら監督が辞任したところで日大に対するイメージダウンは今後大きくなると考えられるし、これほど少子化で入学者が減少傾向なので学生の奪い合いでは不利になるとも思います。

もちろん広告をバンバンだしてイメージアップを図る対応をせざるおえなくなるのでコスト増大です。今後の広報関係者の心労が予想できます。

「関係者の皆様に大変なご迷惑をおかけしております」って魔法の言葉で別にテレビやニュースを見ている人たち対して言っているわけではありません。文字通りなら関わっている人たちだけに向けています。

ところで日本大学には危機管理学部というのがあるそうですがメディア対応は危機管理教育に入っていないんでしょうか。

以上です。